おはようございます。今日は、ChatGPTの無料プランに広告が入る範囲が一気に広がる話からです。日本ではすでに始まっている仕組みですが、今回は個人データの扱いに厳しい欧州が対象になりました。
1. OpenAI、ChatGPTの広告を欧州31か国へ拡大 — 8月24日から
何が起きた? OpenAIは8月19日、ChatGPTの広告を8月24日から欧州31か国で表示し始めると発表しました。ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、オランダ、ポーランド、スウェーデン、アイルランドなどが含まれます。同社の広告事業としては、これまでで最大の拡大です。
広告が出るのは無料プランと、低価格の「Go」プランの利用者だけです。Plus、Pro、法人向けのプランは、これまでどおり広告なしのままとされています。
この事業は今年2月に米国で試験的に始まり、その後カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、英国、メキシコ、ブラジル、日本、韓国へと広がってきました。日本の無料プラン利用者は、すでにこの仕組みの中にいることになります。
今回注目されたのは、欧州での同意のとり方です。EUの個人データ保護規則(GDPR)のもとでは、個人データを使った広告に本人の同意が必要になります。OpenAIは利用者に、「個人に合わせた広告」と「会話の内容に応じた広告」のどちらかを選ばせる形をとりました。
前者は、広告の閲覧履歴や関心、クリック後の購買の傾向、広告主側から提供されたデータなどを使います。後者はいま話している会話の内容と、おおまかな位置情報だけを手がかりにし、過去のチャット履歴や記憶機能の内容は使わないとされています。同意はあとから取り消すことができ、設定画面から変更できます。
なぜ重要? 「AIとの会話は、どこまで広告に使われるのか」という問いに、事業者側が具体的な線を引いた例だからです。検索の履歴より、AIとの会話のほうが個人的な内容を含みやすいことは想像がつきます。悩みごとや体調、お金の相談などを打ち込んでいる人もいるでしょう。
日本ではすでに広告が導入されているので、気になる方はChatGPTの設定画面にある広告関連の項目を一度確認してみるとよいかもしれません。国によって選べる項目は違いますが、何がどう使われる設定になっているかを知っておくだけでも違います。
ひとこと解説: 「コンテキスト広告(contextual ads)」は、その人が誰かではなく、いま見ている・話している内容に合わせて出す広告のことです。個人を追いかけないぶんプライバシー面の負担は軽くなりますが、広告主から見た精度は下がるとされ、事業としては両立の難しいところです。
2. Anthropic、Claudeがタンパク質を設計 — 15の標的のうち14で実験室が「結合を確認」
何が起きた? Anthropicは8月19日、Claudeに新しいタンパク質を設計させ、その結果を実際の実験室で確かめたという報告を公開しました。
やったことを簡単に言うと、特定のタンパク質にぴったりくっつく別の小さなタンパク質(バインダー)を、ゼロから設計させるという課題です。ふつうは専門家が1つの標的につき数週間から数か月かけて取り組む仕事とされています。
使われたのは「Mythos Preview」と「Opus 4.8」という2つのモデルで、インターネットや論文、GPU、タンパク質の立体構造を予測する専用モデルなどを使わせたうえで、15の標的に対して合計1,320件の設計案を出させました。
検証は、Anthropic自身ではなくAdaptyv BioとTwist Bioscienceという受託の実験室が担当しました。設計どおりに実物を作り、本当にくっつくかを独立に測定しています。その結果、354件が結合を確認され、15の標的のうち14で成功したと報告されました。成功率は条件によって22.6〜26.7%、標的を1つずつ扱う設定では35.1%で、この分野で一般的とされる10〜15%を上回る水準だとしています。
うまくいかなかった例もはっきり書かれています。人工的に作られた特殊な構造の標的や、表面がなめらかで取っかかりの少ない標的では苦戦したとのことです。
あわせて、別の実験も報告されています。Opus 5に、測定装置から出てくる生データ(NMRやLC-MS)をそのまま読ませて成分を調べさせたところ、それぞれ23分と19分で処理し、純度の判定は実験室の値96.33%に対して96.4%と、ほぼ一致したとしています。
なぜ重要? AIが論文を要約したり実験の計画を手伝ったりする話はこれまでもありましたが、今回はAIが出した設計を、外部の実験室が実物で確かめたという点が違います。「もっともらしい出力」ではなく「実際に機能したかどうか」で評価されているわけです。
ただし、受け止めには注意が必要です。これはAnthropic自身が公開した報告であり、第三者による査読を経た論文ではありません。検証を外部の実験室に任せている点は信頼性を高める工夫ですが、課題の選び方や比較対象の置き方まで外部が検証したものではない、という前提で読むのが正確です。
なお同社は、一般向けに提供しているモデルでは生物系のこうしたタスクを制限していると説明しています。同じ技術が悪用されうる分野でもあるためで、科学者向けには審査を通したうえで使えるようにする仕組みを準備中だとしています。
ひとこと解説: 「バインダー」は、狙ったタンパク質にくっつくよう設計された小さなタンパク質です。医薬品や検査薬の材料になりうるため、設計を速く安くできることの意味は小さくありません。「NMR」「LC-MS」は、物質の中身や純度を調べる分析装置のことです。
3. Microsoft、Copilotの深刻な欠陥をようやく修正 — 報告から約8か月
何が起きた? セキュリティ企業Varonisの調査チームが見つけたMicrosoft Copilot(個人向け)の脆弱性について、Microsoftが8月18日に修正を適用したことが8月19日に報じられました。報告を受けてから約8か月が経っていたとされ、対応の遅さが指摘されています。
この欠陥(CVE-2026-24301、通称「CoSnitch」)は、リンクを1つ開くだけで、Copilotにつないでいるサービス(Gmail、Googleドライブ、カレンダーなど)から情報を抜き出せてしまうというものでした。URLに仕込まれた命令がページを開いた時点で自動的に実行され、確認画面も出ないまま処理が進む作りだったと説明されています。
さらに厄介なのは記憶機能の汚染です。細工したページをCopilotに要約させると、攻撃者の指示が記憶として残り続ける恐れがありました。パスワードを変えてもログインし直しても消えない、という性質です。
現時点で、実際に攻撃に使われた形跡は見つかっていないと報じられています。修正はすでに適用済みで、利用者側で特別な作業は不要です。
なぜ重要? AIアシスタントに自分のメールやカレンダーをつなぐと便利になりますが、つないだ分だけ、AIが持ち出せる情報も増えます。今回のように「リンクを開いただけ」で被害が成立しうる作りだと、注意深さだけでは防ぎきれません。
家庭で今日できることがあるとすれば、AIアシスタントにどのサービスを接続しているか一覧を見てみることです。使っていない接続を外しておくだけでも、万一のときに出ていく情報は減ります。
ひとこと解説: 「プロンプトインジェクション」は、ウェブページやメールの中にAI向けの指示を紛れ込ませ、AIをだまして本来しないはずの動作をさせる手口です。人間には見えない形で書かれることもあります。AIが外部の情報を読んで動く仕組みである以上、根本的になくすのが難しい種類の問題とされています。
4. Amazon、Alexa+をFire TVで無料開放 — 月19.99ドルの課金を撤廃
何が起きた? Amazonは8月19日、生成AIを使った音声アシスタント**「Alexa+」を、対象のFire TV端末で追加費用なしに使えるようにする**と発表しました。まず米国からの提供です。
これまで、Prime会員以外がAlexa+を使うには月19.99ドルが必要でしたが、Fire TVでの利用に関してはこれが不要になります。アプリを入れる必要も申し込みも要らず、自動で切り替わるとのことです。対象は現行のFire TV Stick、Fire TV Cube、Amazon Ember搭載テレビ、一部のHisense・Panasonic製テレビなどです。
すべてが無料になるわけではありません。Echoスピーカーでの利用、複数の操作をまとめて実行する定型アクション、Ringカメラとの連携などは、引き続きPrime会員か有料プランの範囲とされています。
なぜ重要? AIアシスタントの競争が、機能ではなく価格の側でも動き始めたことを示す動きです。テレビの前という「家庭で最も長く見られている画面」を押さえにきた、という見方が出ています。
日本での提供時期は今回の発表には含まれていません。ただ、この分野の値付けは各社が互いを見ながら決める傾向が強く、AIアシスタントの月額課金という考え方そのものが揺らぐ可能性はあります。有料プランの契約を検討している方は、少し様子を見るという判断もありえます。
ひとこと解説: 「Alexa+」は、従来のAlexaを生成AIで作り直したもので、決まった言い回しでなくても会話の流れで指示が通りやすくなっています。従来型が「命令を聞き取る」仕組みだったのに対し、こちらは「文脈をふまえて返す」方向に寄せた作りです。
5. 中国の人型ロボット企業Unitreeが上場 — 初値は公開価格の7倍超
何が起きた? 踊るロボットの動画で知られる中国のUnitree Robotics(宇樹科技)が8月19日、上海証券取引所に上場しました。中国本土で人型ロボットの会社が上場するのは初めてです。
公開価格は1株150.8元で、調達額はおよそ61億元(約9億ドル)。取引開始後の初値は1,100元と、公開価格を629%上回りました。その後は値を戻し、終値は845元(公開価格比+460%)。時価総額は取引時間中に一時660億ドル規模に達し、終値ベースでは3,420億元程度となりました。
この水準は、中国のBaiduやJD.comといった大手を上回り、米国のロボット企業Figure AI(2025年9月の資金調達時の評価額390億ドル)も超えます。創業者の王興興氏は36歳です。
なぜ重要? 人型ロボットに対する期待の大きさが、株式市場の数字としてはっきり出た例です。実際の売上や利益の規模に比べて評価が先行しているという指摘は多く、初値から終値までの間に大きく値を戻したこと自体が、値付けの難しさを表しています。
技術面で見ると、この分野の主導権が中国側に傾きつつあるという議論は以前からありました。今回の上場で、資金調達の手段も加わったことになります。日本の製造業やサービス業にとっても、数年単位で影響が及びうる話です。
なお、当サイトは特定の企業の株式の売買を勧めることはしません。上場直後の株価は値動きが非常に大きく、企業の実力とは別の要因でも動きます。
ひとこと解説: 「初値」は、上場した日に最初についた取引価格のことです。公開価格(事前に決めた売り出し価格)を大きく上回ること自体は珍しくありませんが、その差が大きいほど、買いたい人の期待が実態より先行している可能性も高くなります。
まとめ
今日並んだのは、AIが暮らしの中でお金をどう受け取るかという話でした。OpenAIは会話の場に広告を置き、Amazonは逆に課金をやめて利用者を集めにいき、Unitreeは株式市場から資金を集めました。同じ「AIを広める」でも、原資の作り方はまったく違います。
一方でAnthropicの報告は、AIが実際に役に立つのかを実験室で確かめるという、地味だけれど確かな方向の話でした。Copilotの件は、AIに情報をつなぐことの代償を思い出させます。
今日できることを1つ挙げるなら、AIアシスタントに接続しているサービスと、広告関連の設定を、一度だけ開いてみることです。どちらも数分で終わります。変更しなくても構いません。何がつながっていて、何が使われる設定になっているのかを知っておくと、次にニュースを見たときの受け止め方が変わります。
出典:
- ChatGPT Ads expands across Europe - OpenAI
- OpenAI builds offerings on consent as it expands ChatGPT ads to Europe - Digiday
- OpenAI To Launch ChatGPT Ads In 31 European Markets On August 24 - Dataconomy
- OpenAI expands ChatGPT ads to 31 European markets - Neowin
- How Claude is accelerating protein design and analytical chemistry - Anthropic
- Case study: Benchmarking Claude designs in the wet lab - Adaptyv Bio
- Anthropic says Claude designed protein binders for 14 of 15 targets in lab test - Storyboard18
- Microsoft finally patches critical one-click Copilot vulnerability, almost eight months after learning of it - CSO Online
- Microsoft Copilot Personal Flaws Could Let One Click Exfiltrate Data From Connected Apps - The Hacker News
- CoSnitch: When Your AI Assistant Becomes Its Own Whistleblower - Varonis
- Amazon makes its AI-powered Alexa+ free on Fire TV, no Prime required - TechCrunch
- Alexa+ comes to Fire TV at no additional cost for all U.S. customers - About Amazon
- Unitree Robotics surges 629% to US$66 billion valuation in Shanghai share debut - South China Morning Post
- Unitree, famous for its dancing robots, surges by 460% on its trading debut - Fortune