おはようございます。9月20日(日)は、「AI開発のペースを落とそう」という業界の申し合わせが、今度は裁判所に持ち込まれたというニュースから始めます。あわせて、その真逆を行くNVIDIAの見通し、「AIがAIを作る」割合の初公開、そしてChatGPTのカスタムGPT終了という手元の変更を取り上げます。

1. 「AI減速の申し合わせ」は独占禁止法違反 — 有料ユーザー4人が集団訴訟

何が起きた? ChatGPT・Claude・Grok・Geminiの有料契約者4人が、現地時間9月18日(金)、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に、Anthropic・OpenAI・SpaceXAI・Googleの4社を相手取った訴えを起こしたと報じられました。全米の有料契約者を代表する**クラスアクション(集団訴訟)**として申し立てられています。

原告側の主張は、4社がAI開発のペースを意図的に落とすことで足並みをそろえたのは、独占禁止法(反トラスト法)違反にあたる、というものです。その根拠として挙げられているのが9月12日の出来事です。この日、Anthropicのダリオ・アモデイCEOが「安全対策を優先して業界全体で開発を減速すべきだ」という趣旨の文章を公開し、同じ日にOpenAIのサム・アルトマン氏、SpaceXAIのイーロン・マスク氏、Google DeepMindのデミス・ハサビス氏がそれぞれ賛同を表明しました。原告側は、この一連の動きが有料サブスクリプションの価値を下げる効果を持つと主張しています。

なお、アモデイ氏は元の文章の中で独占禁止法上の問題が起こりうること自体は認めており、米政府が安全に関する協議について「限定的な適用除外」を出すのが望ましい、という趣旨を書いていました。報道時点で4社からのコメントは出ていません。訴えが認められるかどうかは、これから裁判で争われます。

ひとこと解説: 独占禁止法(反トラスト法)は、企業同士が裏で示し合わせて競争をやめることを禁じる法律です。ふつうは「値上げのカルテル」が典型例ですが、今回は「品質(=AIの進歩)を意図的に抑える申し合わせ」も同じ問題になるのではという、やや珍しい切り口になっています。

なぜ重要? ここ2週間ほど続いてきた「AIを減速すべきか」という議論は、これまで発言や提言のレベルでした。それが訴訟という形で法的な圧力に変わったのが今回の新しさです。安全のために協調しようとすると独占禁止法に触れうる、という板挟みは、今後の業界ルールづくりの大きな論点になりそうです。ただし現時点ではあくまで原告側の言い分であり、裁判所の判断ではない点に注意してください。

2. NVIDIAフアンCEO「来年はチップを2倍売る」 — 減速論とは真逆の見通し

何が起きた? NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは現地時間9月17日(木)、スコットランドで開かれたAIサミット(チャールズ国王が主催した会合)の場で記者団に対し、**「来年は今年の2倍のチップを売ると見ている」**と述べました。理由として、「AIがさまざまな産業・経済にもたらす貢献が大きく、ほぼすべての国でAIへの投資意欲がある」という趣旨を挙げています。

NVIDIAは直近で、2028年1月期に約70%の成長という見通しを示していました。今回の発言は、それをさらに上回るペースの需要が続くという見方になります。フアン氏は同じ場でAIの安全性テストの必要性には理解を示しつつ、開発を減速すべきという主張には距離を置いたと報じられています。

なぜ重要? 同じ会合で「存亡に関わる危険」が語られた一方で、AIインフラを供給する側は需要の倍増を見込んでいるという、対照的な景色が同じ日に並びました。**「議論は減速、投資は加速」**という食い違いが、いま業界で起きていることの現実的な姿だといえます。

ひとこと解説: ここでいう「チップ」は、AIの学習や応答に使う**GPU(画像処理向けから発展した高性能な演算チップ)**のことです。数量が2倍でも売上が2倍になるとは限らず、あくまで経営者の見通しである点は押さえておきたいところです。なお、当サイトは特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。

3. Anthropic「ClaudeがAI研究開発の26%を主導」 — 自動化の度合いを初めて指標化

何が起きた? Anthropicは現地時間9月17日(木)、社内のAI研究開発をどれだけAIが担っているかを測った初の詳細なレポートを公表しました。同社が**「R&D Automation Index」と呼ぶ指標で、Claudeが26%の業務を「主導(lead)」しているという結果が示されています。同社によれば、この割合は2026年2月時点では1%未満**でした。

測り方はこうです。7月にモデル研究開発に関わる社員の20%を対象に、Slackの記録などをもとに約15,000件の作業を542カテゴリに分類し、AIの関与度を5段階(AL0〜AL5)で評価しました。AL4(=主導)は「高いレベルの指示を受けて、人の監督のもとで作業の大部分をこなす」状態を指します。AL5(完全な自律)に達した領域はゼロで、90%超の作業でClaudeが少なくとも「協働」レベルで関わっているとされます。また、8月時点で社内の主要な基盤上で常時およそ30,000のエージェントが稼働していたことも公表されました。

一方で、この数字には注意点も多いとされています。指標の設計も、対象作業の選び方も、記録の保有も、評価に使うモデルもすべてAnthropic自身です。同社自身も「自社モデルで自社を評価すると、同じ誤りを共有してしまう恐れがある」と認めています。外部の評価機関METRによる検証では、同社のエージェント監視の仕組みに未知の脆弱性が複数見つかったとも報じられています。

なぜ重要? 「AIがAIの開発を助ける」という話は以前から語られてきましたが、当事者が数字を出したのは初めてです。数字そのものより、こうした測り方が今後の規制の土台になりうる点が重要で、だからこそ「誰が測るのか」という問題も同時に浮かび上がります。

ひとこと解説: AIエージェントは、指示を受けて自分で手順を組み立て、ツールを使いながら作業を進めるAIのことです。チャットのように1問1答するのではなく、任せて結果を受け取る使い方になります。

4. OpenAI、カスタムGPTを段階的に終了 — プラグインへ移行、作ったものはバックアップを

何が起きた? OpenAIは、2023年11月に登場した**カスタムGPT(GPTs)**を段階的に終了し、プラグインへ移行する方針を進めています。9月11日のリリースノートで「各プランでカスタムGPTを終了していく」方針と移行手段が示され、9月18日にかけて詳しい時期が報じられました。

現時点で日付がはっきりしているのはEnterprise(法人向け)ワークスペースで、9月17日に移行機能の提供開始、9月25日に新規作成の終了、12月11日にカスタムGPTの動作停止、という流れです。Free・Plus・Proなどの個人向けプランは「同じ流れをたどる可能性がある」とされていますが、日付は変更されうるとされ、各ユーザーにはアプリ内で個別に通知されます。なお個人向けアカウントでは、すでに新規作成と公開ができなくなっています(既存のものは当面使えます)。

移行では注意点があります。GPTに書いた指示文はプラグインの「スキル」に引き継がれますが、カスタムアクション(外部サービスとの連携設定)は引き継がれず、作り直しが必要です。選んでいたモデルの設定も引き継がれません。OpenAIは、終了日が来る前に指示文・参照ファイル・連携設定・よく使うプロンプトを控えておくよう案内しています。

なぜ重要? 仕事や学習用に自分専用のGPTを作り込んでいた人にとっては、手元の作業環境が変わる話です。とくに社内で共有していた場合は影響が広がります。いま一番確実なのは、中身をテキストとして手元に保存しておくことです。

ひとこと解説: カスタムGPTは、あらかじめ役割や口調、参照資料を設定した「自分専用のChatGPT」です。プラグインは、それに加えて外部のアプリとつなぐ仕組みを持つ後継の形、という位置づけになります。

5. Google、AIエージェント「CC」を家族6人で共有できるように(米国・18歳以上)

何が起きた? Google Labsは現地時間9月17日、実験中のAIエージェント**「CC」**を、最大6人の家族で1つ共有できる形に広げたと発表しました。Geminiを基盤としたサービスです。

家族版では、家庭の予定やメールをまとめて扱い、「Your Day Ahead」という1日の要約を作ったり、共有カレンダーやタスクリストを自動で更新したりできます。学校や航空会社からのメールを自動でCCに回す設定、参加申込書や同意書のPDFの下書き入力、1週間分の献立案や新学期の持ち物リストの作成といった例が挙げられています。

プライバシー面では、メンバーごとにCCへ見せてよい情報を選べる仕組みで、覚えた内容は**「家族全員の共有メモリー」と「個人のメモリー」に分かれて保存されます。新しい差出人については週1回、承認するか無視するかをまとめて確認できる仕組みも用意されています。提供は米国のみで、18歳以上・個人のGoogleアカウントが条件です。既存ユーザーには案内メールが順次届き、それ以外は順番待ちリスト**に登録する形です。

なぜ重要? AIエージェントの話題は仕事の効率化に寄りがちですが、これは家庭の事務作業という、多くの人に共通する面倒を対象にしています。一方で、家族のメールや予定をひとつのAIに預けることになるため、「誰が何を見られるのか」をきちんと確認してから使うことが前提になります。日本での提供は未定です。

ひとこと解説: メモリーは、AIが会話をまたいで覚えておく情報のことです。便利な半面、共有設定を間違えると家族の誰かに見せたくない情報まで回ることがあるため、最初の設定がいちばん大事な機能でもあります。

まとめ

今週後半は、「減速すべきか」の議論が訴訟という形に変わった一方で、チップの需要見通しは倍増、AIがAI開発の26%を主導と、加速の証拠も同時に出てきました。どちらか片方だけを見ると景色を読み違えてしまいそうです。

手元の話では、カスタムGPTの終了が一番実害の出やすい変更です。自分で作ったGPTがある方は、今日のうちに指示文をコピーしてテキストファイルに保存しておくことをおすすめします。移行の案内はアプリ内に届くので、通知を見落とさないようにしてください。

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