何十ページもある資料や、細かい字の説明書。「とりあえずAIに要約してもらおう」と思ったことがある人は多いはずです。AIの要約はとても便利ですが、頼み方しだいで大事なところが抜け落ちたり、書いていないことが混ざったりします。この記事では、失敗しにくい頼み方と、要約を受け取ったあとの確かめ方を整理します。

AIの要約が「ずれる」3つの理由

まず、なぜ要約がうまくいかないことがあるのかを知っておきましょう。

  • 何のための要約かが伝わっていない: 同じ資料でも、「上司に報告したい」のか「自分が手続きを間違えないようにしたい」のかで、大事な部分は変わります。目的がわからないと、AIは「平均的に大事そうなところ」を選びます。
  • 文書の一部しか読めていない: 長すぎる文書や、画像として取り込まれたPDF(スキャンした紙など)は、AIがうまく文字を読み取れないことがあります。途中から読めていないのに、それらしい要約を返す場合もあります。
  • もっともらしく補ってしまう: AIは文章をなめらかにつなげるのが得意なぶん、文書に書かれていない一般論を混ぜることがあります。これをハルシネーション(もっともらしい誤り)と呼びます。

頼み方の型 — 「目的・読み手・形・長さ」をそろえる

要約を頼むときは、次の4つを入れるだけでぐっと精度が上がります。

  1. 目的: 何に使うのか(例: 手続きの期限と必要書類を知りたい)
  2. 読み手: 誰が読むのか(例: 専門知識のない家族)
  3. 形: どんな形でほしいか(例: 箇条書き、表、Q&A)
  4. 長さ: どれくらいか(例: 5行以内、300字程度)

たとえば、次のように頼みます。

この資料を、明日の会議に出られない同僚に共有するために要約してください。**決まったこと・まだ決まっていないこと・次にやること(担当と期限)**に分けて、箇条書きで10行以内にしてください。資料に書かれていないことは足さないでください。

最後の一文「書かれていないことは足さないで」は、とても効き目があります。ぜひ毎回入れてみてください。

長い文書は「まず目次、それから部分」

100ページを超えるような文書は、いきなり全体を要約させるより、2段階に分けると失敗が減ります。

  1. 全体の構成を聞く: 「この文書の章立てと、それぞれの章に何が書いてあるかを1行ずつ教えて」
  2. 必要な章だけ深掘りする: 「第3章の、料金と解約条件のところだけ詳しくまとめて」

1段目で章が抜けていないかを見れば、AIが最後まで読めているかの確認にもなります。目次と見比べて、途中で終わっていたら要注意です。

要約を受け取ったら、この3つを確かめる

1. 数字・日付・固有名詞は原文で見る

金額、期限、人数、会社名などは、要約が間違えやすく、間違えると困る部分です。「この数字は原文の何ページにありますか?」と聞き、該当箇所を自分の目で確認しましょう。

2. 「書いていないこと」を聞く

「この文書で触れられていないけれど、判断に必要そうなことはありますか?」と聞くと、要約から抜けた論点や、文書自体の不足に気づけることがあります。

3. 反対の立場から読み直してもらう

契約書や規約なら「利用者にとって不利になりそうな条件を挙げて」、企画書なら「弱点や反論されそうな点を挙げて」と頼むと、要約では丸められがちな注意点が見えてきます。

ひとこと解説: 要約は「情報を減らす作業」です。何を減らしたかは、頼んだ側が確かめないとわかりません。要約は地図、原文は現地と考えて、大事な判断の前には現地(原文)を見に行きましょう。

入れる前に考えたい文書

AIに文書を渡す前に、次のようなものが含まれていないか確認してください。

  • 他人の個人情報(名簿、顧客リスト、履歴書など)
  • 会社の社外秘の資料(勤務先がAIの利用ルールを決めている場合は、そちらが優先です)
  • マイナンバー、口座番号、健康に関する詳しい情報

どうしても使いたい場合は、名前を「Aさん」に置き換えるなど、特定できない形に直してから渡すのが安心です。詳しくは「AIに入力してはいけない情報」の記事も参考にしてください。

まとめ

  • 要約を頼むときは、目的・読み手・形・長さを伝え、「書かれていないことは足さないで」と添える。
  • 長い文書は、まず章立て、次に必要な部分の2段階で。
  • 受け取ったら、数字・日付・名前は原文で確認し、「抜けていること」「不利な点」も聞いてみる。
  • 個人情報や社外秘の文書は、渡す前に置き換えるか、使わない。

AIの要約は、長い文書の「入り口」を一気に短くしてくれる道具です。最後の判断は原文と自分の目で、という使い方を心がければ、心強い相棒になってくれます。