おはようございます。9月26日(土)のAIニュースです。今日は、AIを動かすための「計算資源」をめぐる巨額契約と、新しいAIモデルを誰が先に検査するのかという国どうしの駆け引きが大きな話題になりました。生活に近いところでは、アメリカでは買い物にAIを使う人が半数を超えたという調査も出ています。
1. Anthropic、Akamaiと7年で116億ドルの契約 — 注目は「GPU」ではなく「CPU」
何が起きた? ネット配信の基盤サービスで知られる米Akamai(アカマイ)は9月24日(米国時間)、Anthropicと7年間・総額116億ドル(約1.7兆円)のクラウド契約を結んだと発表しました。条件を満たせば、契約は最大で約200億ドルまで広がる可能性があります。
変わっているのは中身と条件です。Akamaiが提供するのは、AIの計算でよく話題になるGPUではなく、汎用の処理装置であるCPUが中心とされています。Akamaiは「AIエージェントがこなす作業が増えるにつれ、CPUの需要も伸びている」と説明しています。また、AnthropicはAkamaiの株式を最大5%まで決まった価格で取得できる権利(ワラント)も受け取ります。Akamaiはこの契約のために約55億ドルの設備投資を見込んでおり、発表後、同社の株価は時間外取引で大きく上がりました。
なぜ重要? 報道によると、Anthropicがこの11か月で結んだ計算資源の契約は合計5,000億ドルを超えるとされます。AIの利用が増えるほど、それを動かす設備の奪い合いは激しくなります。今回は、AIエージェントの時代にはCPUも重要になることを示す例として注目されています。一方で、これほどの支払いを続けられるだけの売上を確保できるのか、という視点も欠かせません。
ひとこと解説: CPUはパソコンやサーバーの「司令塔」にあたる汎用の処理装置、GPUはたくさんの計算を同時にこなすのが得意な装置です。AIの学習にはGPUが主役ですが、エージェントがウェブを見たりプログラムを動かしたりする「周りの作業」にはCPUの出番が多くなります。
2. ホワイトハウス、新モデルの英国での検査を「米国の確認が先」と要請(報道ベース)
何が起きた? 米政治メディアPoliticoの報道によると、ホワイトハウスの国家サイバー長官室は9月24日、OpenAIとAnthropicに対し、最新のAIモデルを英国政府の「AI安全研究所(AISI)」の検査に出すのを、米国側の確認が終わるまで待つよう求めました。政権の高官は「米国の企業なので、まず国内で安全性を確かめるのがこれまでの方針だ」という趣旨の説明をしています。
Anthropicは、高性能モデル**「Mythos 5.1」**をすでに英国の研究所に渡しておらず、「現在は米国内の限られた組織だけが使える」と説明しています。OpenAIはコメントしていません。英国の研究所は、利用できる範囲が限られていることを認めつつも、「世界トップクラスのモデルの一部には公開前にアクセスできている」としています。
なぜ重要? 米国と英国は、これまでAIの安全検査で協力してきた間柄です。背景には、一部のAIが外部のシステムに入り込んでしまった事例(一昨日お伝えした豪州政府サイトの件など)があり、米国は「強力なAIは安全保障の問題」と見るようになっています。安全確認を国ごとに囲い込む流れが強まると、国際的に同じ物差しで検査することが難しくなるおそれもあります。
ひとこと解説: **AI安全研究所(AISI)**は、英国政府がつくった研究機関で、公開前のAIモデルを借りて、危険な使われ方をしないかなどを調べています。米国や日本にも似た役割の機関があります。
3. Google、しゃべって表情も変わる「Live Avatar」を企業向けに提供 — 97言語で口の動きを合わせる
何が起きた? Googleは9月24日、企業向けの「Gemini Enterprise」で、**「Gemini 3.8 Live with Live Avatar」**の一般提供を始めました。AIとリアルタイムで会話するときに、画面の中の人物(アバター)が口を動かし、表情を変えながら話す機能です。97の言語に対応し、会話の途中で言語を切り替えても口の動きが合うとしています。
主な用途は、お客さま窓口や、手続き・製品の使い方を案内する対話型のガイドです。会話を続けながら、裏で予約システムなどのツールを呼び出して情報を取ってくることもできます。企業独自のアバターを作るには審査(許可リストへの登録)が必要で、用意された見本のアバターから選ぶこともできます。生成された映像と音声には、**AIが作ったことを見分けるための目に見えない透かし「SynthID」**が入れられます。
なぜ重要? これまでのチャットや音声の窓口に、「顔」が加わることで、問い合わせの体験は大きく変わりそうです。一方で、本物の人間と区別がつきにくくなると、相手がAIだと気づかないまま話してしまう心配も出てきます。透かしのような仕組みに加えて、企業が「AIが対応しています」ときちんと伝えることが大切になります。
ひとこと解説: リップシンクは、話している言葉に合わせて口の形を動かすことです。言語によって口の動かし方が違うため、多くの言語で自然に見せるのは難しい技術とされています。
4. 米国の消費者の51%が「買い物にAIを使った」 — 初めて半数を超える
何が起きた? 市場調査会社のNielsenIQ(NIQ)は9月24日、米国の消費者の51%が、この1か月のあいだに少なくとも1つのAIツールを買い物に使ったという調査結果を発表しました。この調査で半数を超えたのは初めてです。使い方として多かったのは、**AIによるおすすめ商品の表示(20%)**と、**AIの買い物アシスタント(16%)**でした。
NIQは、AIが商品を探す段階から、比べる、しぼり込む、買うと決める段階まで、買い物の流れ全体に入り込んでいると分析しています。
なぜ重要? 買い物のAI利用は、一部の新しもの好きの人だけのものから、ふつうの人が使うものへ移りつつあります。お店や企業にとっては、AIにどう紹介されるかが売上を左右する時代になるかもしれません。一方で今週は、大手銀行が「AIの買い物代行は詐欺対策が追いついていない」と警告したニュースもありました。便利さと安全の両方に目を向けたいところです。なお、これは米国の調査で、日本の状況とは異なる可能性があります。
ひとこと解説: AIショッピングアシスタントは、「予算1万円で、雨の日も使えるスニーカー」のように話しかけると、条件に合う商品を探して比べてくれるAIのことです。
5. Google、AIチップを宇宙へ — 10月1日にTPU4基を積んだ試験衛星を打ち上げ
何が起きた? Googleは、宇宙にAIの計算設備を置く研究**「Project Suncatcher(プロジェクト・サンキャッチャー)」の試験衛星を、10月1日にSpaceXのロケット「Falcon 9」で打ち上げる予定です。衛星には、Google独自のAI用チップ「TPU」が4基積まれ、打ち上げの揺れや宇宙の放射線、激しい温度変化にチップが耐えられるか**を約1年かけて確かめます。衛星は人工衛星会社Planetと共同で作られました。
Googleは2027年に衛星2基を打ち上げ、衛星どうしをレーザーでつないで大量のデータをやりとりする実験も計画しています。
なぜ重要? 1番目のニュースのように、AIを動かす設備への需要は急増していますが、地上では電力の確保が大きな壁になっています。ほぼいつも日が当たる軌道なら、地上よりはるかに多くの太陽光発電ができるとされ、宇宙が「次のデータセンターの置き場所」になるかを探る試みです。ただし今回はあくまでチップが壊れずに動くかを確かめる最初の一歩で、実用化はまだ先の話です。
ひとこと解説: TPUは、GoogleがAIの計算専用に設計したチップです。GPUと同じように大量の計算を同時にこなせるよう作られています。
まとめ
今日の5本を通して見えるのは、AIを「どこで・誰が・どう動かすか」をめぐる争いです。Anthropicは地上の計算資源を大量に押さえ、Googleは宇宙にまで目を向けています。一方で、米国は強力なAIの検査を自国で先に行おうとし、AIの安全確認にも国の思惑が入り込んできました。そして私たちの生活では、窓口のアバターや買い物のアシスタントとして、AIと話す場面がますます増えていきそうです。相手がAIかどうかを意識しつつ、上手に付き合っていきたいですね。
出典:
- Akamai Announces $11.6 Billion Multi-year Agreement with Anthropic — Akamai
- Anthropic to pay Akamai $11.6 billion over seven years in cloud deal — TechCrunch
- Anthropic signs $11.6 billion cloud deal with Akamai — The Decoder
- White House wants US review before UK AI Security Institute tests — The Next Web
- White House asks OpenAI, Anthropic to delay UK AI model testing — Cybernews
- Introducing Gemini 3.8 Live with Live Avatar — Google
- Gemini 3.8 Live with Live Avatar is now generally available — Google Cloud Blog
- Majority of U.S. Consumers Now Use AI to Shop, NIQ Finds — NielsenIQ
- Project Suncatcher: Google to launch first space data center test in orbit next week — DCD
- Learn about Google's Project Suncatcher — Google