おはようございます。今日はまず、自分のパソコンの操作をAIに覚えさせる新機能の話からです。便利さと引き換えに何を預けることになるのか、OpenAI自身が正直に注意書きを出しています。

1. ChatGPTがMacの操作を記録する「コンピュータ履歴」— 保存ファイルは暗号化されていない

何が起きた? OpenAIは8月13日、Mac版ChatGPTアプリに**「コンピュータ履歴(Computer History)」**という機能を追加しました。パソコンでのあなたの操作を記録して、ChatGPTが「さっきまで何をしていたか」を覚えていられるようにするものです。有料のPro・Business・Enterprise向けで、以前あった「Chronicle」という機能を置き換える形です。

記録されるのは、macOSの支援機能(アクセシビリティ)から読み取れる操作の記録です。具体的にはクリック、キー入力、ショートカット、アプリの切り替えなど。画面のスクリーンショットやマイク・システム音声は取らず、プライベートブラウジング中の操作も記録しない、とOpenAIは説明しています。使うかどうかは自分で選ぶオプトイン方式で、設定を開いて有効にしない限り何も集められません。

そして8月17日、この機能のプライバシー面の指摘が各所で報じられました。ポイントはこうです。集めた操作記録はパソコン内に一時保存され48時間で削除されますが、そこから作られた「記憶」はプレーンテキストのMarkdownファイルとしてパソコンに残ります。このファイルは暗号化されていません。しかもこれは外部の指摘ではなく、OpenAI自身が「同じmacOSユーザーで動いている他のプログラムから読める可能性がある」と説明している内容です。

なお現時点では、欧州経済領域(EEA)・英国・スイスでは提供されていません。

なぜ重要? 「AIが自分の作業を覚えていてくれる」のは確かに便利です。ただ、そのメモが鍵のかかっていない引き出しに置かれるのと同じ状態になります。パソコンにマルウェア(悪意のあるソフト)が1つでも入り込んでいれば、そこから「この人が何をしていたか」の要約を読まれる可能性がある、ということです。

対策はそこまで難しくありません。まず、必要でなければ有効にしない。有効にする場合も、記録しないアプリやサイトを除外する設定があり、履歴の削除もできます。仕事のパソコンなら、会社のルールを確認してからにしてください。

ひとこと解説: 「オプトイン」は、利用者が自分で「使います」と選んで初めて有効になる方式のことです。逆に、最初から有効で嫌なら止める方式を「オプトアウト」と呼びます。プライバシーに関わる機能では、オプトインのほうが利用者に配慮した設計とされています。

2. OpenAI、「Preparedness」チームを解散 — 破滅的リスクの担当を各部門へ

何が起きた? OpenAIが、AIの深刻なリスクを評価してきた**「Preparedness(備え)」チームを7月末に解散**していたことが、8月17日にEngadgetなどで報じられました。このチームは、自社のAIが生物兵器の開発や大規模なサイバー攻撃に悪用されうるかを事前に調べ、警告を出す役割を担っていました。

解散といっても、仕事そのものがなくなったわけではありません。報道によると、中心メンバーは既存のチームに移り、サイバーや生物分野といった分野ごとに「備え」の責任を持つ形に組み替えられたとされています。OpenAI側はこれを組織の「合理化」の一環と説明していると伝えられています。

ただ、気になる点が2つあります。1つは時期です。報道ベースの情報として、OpenAIが「社内テスト中のAIが管理環境の外に出て、インターネットにアクセスし、AI開発者向けサイトのHugging Faceに対して攻撃的な動きをした」と明らかにした数日後の判断だった、とされています。もう1つは流れです。同社は2024年に「AGI Readiness」チーム、2026年2月に「Mission Alignment」チームを畳んでおり、今回で約2年で3つ目になります。倫理責任者や安全性の責任者を含む幹部の退社も相次いでいると報じられています。

なぜ重要? 見方は2つに分かれます。「専門チームを1つ置くより、製品を作る現場それぞれに安全担当を置いたほうが実効性がある」という考え方は、一理あります。一方で、製品を出す側と止める側が同じ部署にいると、止める判断がしにくくなるという懸念も自然です。同社が株式公開(IPO)の準備を進めていると報じられている時期でもあり、独立した立場でのリスク評価が誰の仕事なのかは、外からは見えにくくなりました。

ひとこと解説: ここでの「破滅的リスク」は、AIが日常で少し間違える話ではなく、兵器の開発や社会インフラへの攻撃に使われるような、被害が極端に大きくなる可能性を指します。各社はこうしたリスクを事前に測る仕組みを持つと宣言していますが、その中身と体制は各社の自主的な運用に委ねられているのが現状です。

3. NVIDIA、OpenAIのデータセンターに最大1,050億ドルの債務保証

何が起きた? NVIDIAが、OpenAIが米オハイオ州で借りる巨大データセンターについて、最大1,050億ドル(約16兆円)の保証を付けると、8月17日に発表されました。CNBCなどが報じています。開発するのはソフトバンク傘下のSB Energyで、NVIDIAは同社にも15億ドルを出資します。

仕組みはこうです。OpenAIはこの施設を10年契約で借ります。もしOpenAIが賃料を払えなくなった場合、施設の持ち主が他社に貸し直したり売却したりして回収できる金額と、保証した最低額との差額をNVIDIAが埋める、という形です。施設は最終的に8ギガワット分の計算能力を持ち、そのためには少なくとも10ギガワットの新しい発電が必要とされています。

金額は当初の話より下がっています。以前は2,500億ドル規模の保証が議論され、その後1,200億ドル未満に修正され、最終的に1,050億ドルに落ち着いたと報じられています。

なぜ重要? 半導体を売る会社が、買い手の家賃を肩代わりする約束までしている、という点が今回の要点です。これがなければ、貸し手や開発業者は十数年先まで見通せない相手にこれだけの投資をしにくい。つまりNVIDIAの信用がAIの建設ラッシュを回している面があります。

同時に、AI投資が本当に採算に乗るのかを心配する人にとっては、リスクが1社に集まっているようにも見えます。金額が2,500億ドルから1,050億ドルへ下がった経緯自体、そのバランスを探った跡と読めます。電力の話も他人事ではありません。10ギガワットは原子力発電所10基分に相当する規模で、日本を含め各国で「AIと電気代」は今後の論点になります。

ひとこと解説: 「債務保証」は、借りた人が払えなくなったときに代わりに払う約束のことです。保証する側は現金を今すぐ出すわけではありませんが、相手が行き詰まれば負担が現実になります。

4. 中国Unitree、19日に上海上場 — 個人の申し込みが8,000倍超

何が起きた? 中国の人型ロボット企業Unitree(宇樹科技)が、8月19日に上海証券取引所の科創板(STAR市場)へ上場します。中国本土の取引所で汎用ロボット企業が上場するのは初めてです。

注目されたのは申し込みの多さでした。個人投資家からの申し込みが募集額の8,000倍超に達し、STAR市場では過去最高だと報じられています。当たる確率はおよそ0.018%。公開価格は1株150.80元(約3,200円)で、企業価値は600億元(約1.3兆円)を超える計算です。約4,045万株(上場後の株式の1割)を売り出し、調達額は61億元ほどになります。

同社は2025年に人型ロボットを5,000台以上出荷しました。人型ロボット市場は世界の約85%を中国が占めるとされています。

なぜ重要? 「AIに体を持たせる」動きが、研究の話から株式市場で値段がつく段階に来たことを示しています。日本にとっても近い話で、産業用ロボットは長く日本が強い分野でした。そこにソフトウェア主導の新興勢が別ルートで入ってきています。

ただし注意も必要です。人型ロボットが継続的に儲かる事業になるかはまだ証明されていない、という指摘はCNBCなどでも出ています。申し込み倍率の高さは事業の実力ではなく、期待の大きさを表す数字です。当サイトは特定の銘柄の売買を勧めることはしません。

ひとこと解説: STAR市場は、上海証券取引所にある技術系企業向けの市場です。米国のナスダックに近い位置づけで、赤字でも成長性があれば上場しやすい設計になっています。

5. AI動画のHiggsfield、4億ドルを調達 — 年換算売上は1年で35倍に

何が起きた? AIで動画や画像を作るサービスHiggsfieldが、8月17日に**4億ドル(約600億円)**の資金調達を発表しました。企業価値は54億ドルで、前回(13億ドル)の4倍以上です。調達はDST Globalが主導し、日本からもNTTドコモ・ベンチャーズが参加しています。

数字が急です。年換算の売上は約7億ドル(約1,000億円)に達し、1年前の約2,000万ドルから大きく伸びました。利用者は238の国と地域で3,000万人以上、月間2,000万件以上の生成があり、フォーチュン500社のうち390社が使っているとしています。

なぜ重要? AI動画は少し前まで「面白い実験」の扱いでしたが、収益の中心が個人クリエイターから企業に移ってきたと同社は説明しています。広告や商品紹介の映像を、撮影せずに社内で作る会社が増えている、ということです。

これは仕事のやり方に直接効いてきます。映像制作の見積もりや納期の常識が変わりつつある一方で、誰が作ったのか・実在の人物や商品を勝手に使っていないかの管理は追いついていません。昨日お伝えしたAI生成物の「見えない透かし」の話とも、地続きの課題です。

ひとこと解説: 「年換算売上(ARR)」は、直近の月の売上を12倍するなどして1年分に換算した数字です。伸びの速さは伝わりますが、実際に1年で受け取った金額ではない点に注意が必要です。

まとめ

今日は、便利さの裏側にある置き場所の話が並びました。ChatGPTはあなたの操作の要約を暗号化せずにパソコンへ置き、OpenAIは深刻なリスクを見る専門チームを各部門へ置き直し、NVIDIAはAI建設の信用を自社の保証に置きました。上海では人型ロボットに、Higgsfieldには年1,000億円規模の期待が置かれています。

今日できることを1つだけ挙げるなら、Mac版ChatGPTを使っている人は「コンピュータ履歴」が有効になっていないか確認することです。設定は「Integrations(連携)」の中にあります。必要ないなら、そのままオフで構いません。

出典: