おはようございます。今日は「値段」と「速さ」の話が並びました。安くなるモデルと、一転して値上げするモデル。同じ日に両方が起きています。そこにAI文章の見分け方と、国内発の動きを加えた5本です。

1. Google、「Gemini 3.7 Flash」を公開 — 年内は半額、コーディングとエージェント向け

何が起きた? Googleは8月13日(現地時間)、軽量モデルの新版 Gemini 3.7 Flash を公開しました。前版のGemini 3.6 Flashからわずか23日での更新です。

強化されたのはプログラミングと「エージェント」用途です。公表された数値では、コード修正の指標DeepSWE v1.1が49.0%から**65.3%へ、Webサイト作りの対戦形式評価(WebDev Arena)のスコアが1538から1588へ、業務手順の自動化を測るAutomationBenchが17.0%から30.4%**へ伸びました。PDFの読み取り理解も22.0%から34.0%に上がっています。

利用料金は2026年12月31日までの導入価格として、入力100万トークンあたり0.75ドル、出力100万トークンあたり3.75ドル。前版の登場時と比べてほぼ半額です。ただし年明けからは2倍(1.50ドル/7.50ドル)になると明示されています。Google AI StudioやAndroid Studio、法人向け基盤などから使えます。

なぜ重要? 注目したいのは、これが軽量版だという点です。ロイターは8月13日、Googleの上位モデルの投入が内部テストの結果を受けて約2か月遅れており、共同創業者のセルゲイ・ブリン氏が開発の加速を求めていると報じました(Google側はコメントを控えており、報道ベースの情報です)。上位モデルが待たれるなか、まず安い軽量版で開発者をつなぎ留める、という順番になっています。

一般の利用者にとっての実利は、同じ作業がより安く回せるようになることです。AIを組み込んだサービスの原価が下がれば、値下げや無料枠の拡大という形で降りてきます。

ひとこと解説: 「Flash」のような軽量モデルは、最上位モデルより少ない計算量で動くぶん安く・速く使えます。難問には向きませんが、要約や下書き、定型作業のように量をこなす用途では主役になります。

2. OpenAI、14倍速の「Ultrafast」モードを先行提供 — 半導体のCerebrasと組む

何が起きた? OpenAIは8月13日、主力モデルGPT-5.6 Solを高速で動かす Ultrafast(ウルトラファスト)モード の先行提供を始めました。1秒あたり最大750トークンを出力し、通常の約14倍の速さになるとしています。

支えているのは半導体メーカー Cerebras(セレブラス) との提携です。同社はウエハー1枚をまるごと1つのチップにする独特の設計で、データの出し入れの詰まりを減らしています。現時点ではAPI経由の限定プレビューで、対象は一部の顧客のみ。処理能力が増え次第、広げるとしています。

想定される使い道として挙がっているのは、障害対応、カスタマーサポート、金融市場の分析、ネット通販など、待たされると困る場面です。

なぜ重要? ここ最近の競争は「賢さ」から「同じ賢さをいくらで、どれだけ速く」に移っています。昨日お伝えしたGrok 4.6の価格重視も同じ流れでした。速さは体感に直結します。返答が数秒かかるAIと、話し終わる前に返ってくるAIとでは、電話の自動応答や会話型の窓口で使えるかどうかが変わります。

ひとこと解説: 「トークン毎秒」はAIが文章を吐き出す速さの単位です。日本語ではおおむね1文字が1〜2トークンなので、750トークン毎秒は「1秒でだいたい原稿用紙1枚強」くらいの勢いだと考えると想像しやすくなります。

3. DeepSeek、APIを最大約11倍に値上げ — 「時間帯別料金」を導入

何が起きた? 中国のDeepSeekは、主力モデルV4-ProとV4-Flashの利用料金を、日本時間8月17日午前1時から引き上げると発表しました。上げ幅はモデルや時間帯によって50%から**最大約1,100%(約11倍)**に及びます。

新しく入るのが時間帯別の料金です。混み合う時間(日本時間の10〜13時と15〜19時)は「ピーク料金」、それ以外は半額になります。たとえばV4-Proの出力は、これまで一律100万トークンあたり0.87ドルでしたが、ピーク時3.96ドル、それ以外1.98ドルに変わります。

背景には8月12日に正式提供が始まった新モデル DeepSeek-V4-Pro-0813 があります。道具を使って複数手順の作業をこなすエージェント能力を強化したとされ、同社公表の数値ではコード修正の指標が12.8から62.7へ大きく伸びたとしています。ただし、これは同社が自ら公表した数値で、第三者機関による検証はまだです。

なぜ重要? DeepSeekは「性能のわりに圧倒的に安い」ことで存在感を高めてきました。その看板を自ら下ろす判断です。裏を返せば、AIを動かす計算資源のコストが、安売りを続けられないほど重いということでもあります。

電力料金のように時間帯で値段が変わる仕組みは、AI業界ではまだ珍しいものです。急がない処理を夜間に回す、といった使い分けが今後は当たり前になるかもしれません。

ひとこと解説: 「API」は、自分のアプリやシステムからAIを呼び出して使うための窓口です。チャット画面から手で使うのではなく、プログラムから自動で呼ぶときにこの料金がかかります。

4. Claudeの文章に「見えない透かし」— EUの新ルールに各社が対応

何が起きた? Anthropicは8月11日、Claudeが生成した文章に人間には見えない電子透かしを入れると発表しました。8月2日以降に公開したモデルには自動で組み込まれており、Claude、Claude Code、APIなど各製品に適用されます。古いモデルへの適用は2026年12月2日までに済ませる方針です。

この透かしは文章そのものに織り込まれるため、コピーして別の場所に貼り付けても付いてきます。多少の編集なら残る場合があるとされています。画像やファイルには、業界共通規格のC2PAが使われます。

きっかけはEUのAI法(AI Act)です。8月2日から適用が始まった透明性の規定では、AIが作った・手を入れた内容を機械が見分けられる形で示すことが求められ、違反には最大1,500万ユーロまたは全世界売上の3%という制裁が定められています。Google、Meta、Microsoft、OpenAIなども同じ枠組みへの対応を表明しています。

なぜ重要? 「これはAIが書いたのか」を判定する試みは、これまで当てにならないことが問題でした。文体から推測する既存の判定ツールは、人間が書いた文章を誤ってAI判定してしまう例が絶えません。生成した側が印を付けておく方式は、その点では筋が通っています。

ただし限界もあります。透かしは書き換えれば消せるという指摘が専門家から出ており、隠したい人ほど消せてしまう構造です。また「職場や学校でAIを使ったことが分かってしまう」という利用者側の戸惑いも報じられています。透かしがあることは「AI製である証明」にはなっても、無いことは人間が書いた証明にはならない——この非対称性は覚えておいて損はありません。

ひとこと解説: 「C2PA」は、写真や動画が「いつ・どうやって作られ、どう編集されたか」の記録を、ファイル自体に付けておく国際規格です。AI生成物に限らず、報道写真の真偽確認などでも使われ始めています。

5. 国内発 — Sakana AIが最上位モデル「Sakana Fugu」を無料開放

何が起きた? 日本のSakana AIは8月13日、チャットサービス Sakana Chat を更新し、上位モデル 「Sakana Fugu」 を無料で試せるようにしました(選択にはメールアドレスの登録が必要)。

Fuguの特徴は、1つの巨大なモデルで全部を処理するのではなく、複数のAIモデルを状況に応じて組み合わせて使い分けるという設計です。複雑な指示や、手順が何段階もある作業を得意とするとしています。

同時に、日本語に強い「Sakana Namazu」も中身が刷新され、中国Moonshot AIの公開モデルKimi K2.6を土台にする形になりました。機能面では、安全に隔離された環境でのPythonコード実行、計算やデータ処理、ファイルの作成、Word・Excel・PDFの添付、HTMLの表示確認などが加わっています。

なぜ重要? 海外の大手が数千億円規模で自社モデルを一から作るのに対し、Sakana AIは既存のモデルを賢く組み合わせる方向で戦っています。土台に中国発の公開モデルを使っている点も、この戦い方をよく表しています。

無料で触れるようになったのは、日本語で仕事をする人にとって素直に朗報です。手元の資料を添付して要約させる、といった使い方から試してみるとよさそうです。

ひとこと解説: 「オープンモデル」は、中身のデータ(重み)が公開されていて、誰でも手元やサーバーに置いて使えるモデルのことです。土台として自由に使えるため、各社が自分たち向けに手を加えて製品化する動きが広がっています。

まとめ

今日の5本を貫くのは、AIの値段が「性能で決まる」から「いつ・どれだけ使うかで決まる」へ変わりつつあるという流れです。Googleは期限付きで半額にし、OpenAIは速さを別料金の商品にし、DeepSeekは時間帯で値段を変える。電気やスマホの通信量に近づいてきました。

一方で4番目の透かしの話は、値段とは別の軸——信頼をどう担保するかの話です。安く速く大量に文章が作れるようになるほど、「これは誰が書いたのか」が問われます。今日は、自分が使っているAIサービスの料金体系が最近変わっていないか、一度確認してみるのもいいかもしれません。今日も良い一日を。


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